日本酒

日本各地に酒どころは数多くあるが、日本を代表するとなると、やはり灘(兵庫県)と伏見(京都府)である。
この両者で日本酒の生産量は全国シェアの45%を占めている。

灘では、水は宮水(六甲山系)、米は山田錦(六甲山地北部)、社氏は丹波、この三者によって名酒が生まれ、伏見は、伏流水(伏見丘陵)が豊富で、冬の厳しい冷え込みが酒造りに適しており、江戸時代中期には両者とも、酒どころとして、全国に名が知られるようになった。
灘、伏見が日本一の酒どころと言われるのは、シェアもさることながら、地域一帯に酒蔵が建ち並び、酒造りの街としての雰囲気を持っているところにある。

その魅力の一端は、近代的な醸造技術を駆使した生産ラインはもちろんのこと、それとは別に、昔ながらの手造りの醸造技術を残していることや、それぞれの蔵元が独自に運営する酒造資料館などを建設して、伝統の技が楽しく学べる展示を行っており、訪れる人々の視聴覚を楽しませてくれることにあるのも大きい。

伏見は、16世紀末に豊臣秀吉が伏見城を築いて城下町となり、江戸時代には水運の整備が進み、伏見は京や大坂への交通の要衝となった。
大名の参勤交代によって、港町、宿場町として繁栄した伏見だったからこそ蔵元も増え、現在に繋がる酒どころとしての基盤をつくったのである。
宇治川にそそぐ藻川(ほりかわ)に沿って件む柳並木と土蔵の酒蔵が点在する界隈には、昔ながらの酒造りの匂いが漂っている。

灘の酒は、宮水とともに全国的な名声を得て、江戸では「(上方からの)下り酒」として、すっきりとした上品な風味が評判を呼び、明治以降は酒造技術の急速な発展とともに、品質をさらに向上させていったのだが、1995年に襲った兵庫県南部大地震で灘は大打撃を受け、その後、あらためて“灘五郷”(今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷)としての復興に力を入れ、阪神間の集客地域としての一翼を担うようになっている。

また、「名水あるところに名酒あり」といわれるように日本酒はよい水を求める。
灘・伏見はもちろんのこと、関西では、福井は白山山系、滋賀は箱館山系、奈良は葛城山系、大阪は五月山、兵庫は中国山地、掛保川、和歌山は紀ノ川、三重は鈴鹿山系、布引山系、紀伊山地、徳島は吉野川と、それぞれに名水を持つ地域があり、当然ではあるが、優れた地酒が豊富なことはいうまでもない。